自伝に出ていた初のヨーロッパロケの作品です。この映画の舞台はサーカス一家。独善的な絶対君主の父親とそれに反発をする息子たち、と彼らを取り巻く人々の愛情と憎悪を描いたものです。Vaughnさんはこの時期圧倒的に多かった、heavyつまり敵役です。父親から認められてくて頑張るのですが、父親は自分の技を継承する次男、ジョゼフ(クリフ・ロバートソン)をひいきにし、どんなに彼が演じるクラウスがアピールしても決して認めることはないのです。それ故に、計算ばかりが先に立つ嫌な奴になってしまってます。焦りが見えます。自分の立場を良くしようと、合併相手のサーカス団の花形の娘と結婚をします、愛情はないのですが、ともかく自分に有利になるように計算してのことです。一時は計算通りの立場を手にするのですが、やがて、夫に失望した奥さんは白熊相手の曲芸中に凶暴な白熊に襲われてなくなり、彼もまた数年後、その因果か、弟ジョセフと争っているときに、白熊の檻に背中を向けたために、熊に襲われてしまうのです。だから、最後は無惨です。でもやはり、こういう憎々しい役は当時、彼の演技の見せ所だったのでしょう。本当に彼の心の葛藤も計算も伝わってきます。表現力は出演者の中でピカイチです。彼の特徴的な身のこなしも随所に見られます。
さらに、当時ヨーロッパナンバーワンと言われたクローネ・サーカス団が特別出演しているので、単に「サーカス映画」として見ても楽しい作品です。(家族の憎悪を置いておいて)、今では生のサーカスなどもう見られませんからね。
そして、最後にジョゼフとクラウスが争うシーンがあります、「ああこれが、あのダブルエージェントインタビューで”クリフが自分たちでファイトシーンをやろうと言ったので、やったけれど、クリフが間違った方を向いて、僕が本当になぐってしまった、すごく手がいたかったよ。でもどっちが間違ってひどい目に合うかわからないからね、それ以来、断っているよ”と話していたあのシーンね」と思いながら見ました。(笑)
自伝によれば、この映画撮影中はほとんど毎日、エスター・ウィリアムス、クリフ・ロバートソンと食事をして楽しい日々を過ごしたため、約5キロも体重が増えてしまった、とありました。なるほど、この映画でも若干その傾向が見られるシーンがありました(笑) 自伝を読み、インタビューを聞いてから見るとこの映画もまた別の視点で見れて、なかなか見どころがあります。
