大学卒業後ランカスタープロと直ぐに契約し、そのプロダクションからコロンビアに貸し出す形での初メジャー主演映画です。
大人になりきれない若者たちの社会や大人に対するやり場のない不安、不満に行き先を見失ってしまう、もともとは「Young Rebels](若き反抗者達)というタイトルであったようです。ヴォーンさん演じる主人公バディは、大学から追い出され、そしてタイミング悪く徴兵されてしまいます。すべてが面白くなく、やり場のない気持ちをなんとか慰めてくれるのが、年上の恋人ドロシー、徴兵を逃れるためメキシコに逃亡したい、というバディーに「逃げてばかりいないで」と言われ、「母親みたいなこと言うな」とまたまた反発してしまう。自分では何もできない、のに今の大人よりも自分の方が上だと思い込む、本当は自分が無力だと知っているから尚のこと反発してしまう。本当は母親の愛を求めているのに、逆の行動に出てしまう。そんな揺れ動く心の機微を初主演で見事に演じています。しかも他の二人の共演者とは比較にならないほどの抜きん出た演技力です。
 物語は間違った方向に走ってしまった者への当然の報いとして悲しい結末を迎えるのですが、young Vaughnの演技は光輝いています。この映画があって、「都会のジャングル」のチェット、「荒野の7人」のリーという影のある複雑な心を持つ若者が彼の得意ジャンルとなっていったのもうなずけるところです。
この映画で注目すべきは彼の涙を流して泣くシーンです。彼の演技の多くが悲しみも喜びも内に秘める演技が多いので、涙をボロボロに流しながら運転している様子は、彼がいかに母親の言葉に失望し、傷ついたか、心の痛みが痛いほど伝わってくるシーンでした。
 young Vaughn初主演映画だからこそ見る価値がありますが、でなければ多くの批評が入っているように、忘れ去られてしまっても仕方がない、映画であろうと思います。

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NO TIME TO BE YOUNG(1957)
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