「ベネチタ事件」(1967)、さらにその前の「アンクルの女」の「The Mother Muffine Affair」で、ホラー映画のキング、ボリス・カーロフと共演する前に、ヴォーンさんはカーロフがホストを務める人気ホラーTVシリーズの「スリラー」の一エピソードに主役でゲスト出演しています。ナポレオン・ソロになる以前に数百ものゲストロールをこなしていたころの作品の一つですが、特にこの作品では性格役者としての彼の演技力が光っています。
大学の研究室で熱心に実験に彼のエネルギーを注ぐコーデル博士、実験助手は彼の恋人でもある同僚の研究者の女性。そしてガスの実験の最中に火災が起き、彼はそこで発生したガスを吸い、仮死状態となります。上司でもあるドクターが蘇生処置を行い何とか回復したのですが。。。
実は、この後遺症で彼はベルの音に異常なまでに反応し、それ故に気が付かないうちに錯乱状態からそのベルの音をとめるために所有者を殺害してしまうのです。彼の実験室に迷いこんだ学生を外に案内した直後、その学生のイヤリングの音に異常反応したのが最初。そして刑事が捜査を進めるうちに、もしやその犯人は自分ではないか、そして彼の吸ったガスの解毒剤が見つからない限り、彼の中に殺人鬼が残り続けることを知り、さらに研究に打ち込むのですが、そこでまた次の殺人を犯してしまうのです。ホテルの一室で目覚めた彼は、そのことに気が付き、遺書を書きかけ、恋人も実験を続けると危険とわかり、彼女を呼び出すのですが、その指定された場所がチャペル、皮肉なことに彼女を待つ間にベルが鳴りだし彼はまた錯乱、ベルをとめることが出来ないまま金に押される形で、外に転落して最期を遂げることに。。。。
研究熱心な化学者に起こってしまった災難、というタイトル通りの結末です。
このエピソードでの彼の演技は、やはり心理描写を得意とするヤング・ヴォーンのまさにワンマンショーで、細やかな演技:目の動き、口元の表情、眉の動き、ともかく顔のパーツの全てが細かく変化して行き、セリフなしでの彼の心の動きが手に取るようにわかるのです。ストーリーは皮肉ですが、彼の演技はとても楽しめます。